【事務スタッフの負担軽減と業績向上のために】経営者が今すぐできる3つの取り組みを社労士が解説
2024.12.25
※この記事は、7分程度で読むことができます
はじめに
中小企業の経営において、事務スタッフが果たす役割は非常に重要です。IT化、DX化が進む現代においてはさらにそういった側面は際立っています。一方で、多くの中小企業では、限られた数名の事務スタッフが、給与計算や労務手続き、経理業務などを一手に引き受けている状況が見受けられます。
このような環境では、業務量の増加やミスのリスク、精神的な負担が積み重なり、業務効率の低下や離職につながることも少なくありません。
本コラムでは、事務スタッフの業務効率化を進めるために、経営者が今すぐ実践できる3つの取り組みについて解説します。
経営者が今すぐ実践できる3つの取り組み
事務スタッフの業務効率化を進めるために、経営者が今すぐ実践できる3つの取り組みは、下記の通りです。
1.業務の優先順位を明確化する。
2.業務をシステム化、自動化する。
3.業務を分担、アウトソーシングする。
次のチャプターから、それぞれの詳しい内容をご紹介します。
1.業務の優先順位を明確化する
まずは、業務の優先順位を明確化するために、事務スタッフが日々行っている業務をリストアップし、業務の「見える化」を行いましょう。
業務の「見える化」は、下記の2つのステップで行います。
1.業務内容をリスト化する。
2.業務の重要度と緊急度を分類する
それぞれのステップについて、具体的な工程を見ていきましょう。
1.業務内容をリスト化する
具体的な実施方法として、まず事務スタッフの1日の業務スケジュールや週次・月次のタスクをすべて洗い出します。以下の手順で進めることをお勧めします。
①タスクの洗い出し
・給与計算、社会保険手続き、請求書発行、備品管理など、実際に行っている業務を細かく書き出します。
・一時的なタスクや突発的な対応も記録します。②頻度を明記する
・各業務の実施頻度(例:毎日、週次、月次、年次)を明記します。③業務にかかる時間を記録
・各業務が平均してどれくらいの時間を要するのかを大まかに把握します。④ステークホルダーを確認
・各業務に関与する他部門や外部機関(例:税理士や行政)もリストに含めます。
これらの情報を基に、業務全体を可視化し、負担が集中しているポイントを特定します。
2.業務の重要度と緊急度を分類する
以下の手順を用いて、業務を「重要かつ緊急」「重要だが緊急でない」「緊急だが重要でない」「どちらでもない」の4象限に分類します。
①判断基準を設定する
・“重要”: 会社の業績や従業員の満足度に直接影響を与える業務(例:給与計算や社会保険手続き)。
・“緊急”: 期限が差し迫っており、即対応が必要な業務(例:行政への届出や支払い業務)。
②業務を分類表に落とし込む
Excelやホワイトボードを活用し、以下のような4象限マトリックスを作成しましょう。
第1象限(重要かつ緊急): 締切がある社会保険手続き、給与支払いなど。
第2象限(重要だが緊急でない): 従業員研修の企画や新システム導入準備。
第3象限(緊急だが重要でない): 書類の送付や簡易的な問合せ対応。
第4象限(どちらでもない): 過去データの整理や備品の在庫確認(必要時にのみ対応)。
③優先順位を設定する
第1象限の業務を最優先とし、第2象限の業務も計画的に進めましょう。
第3象限と第4象限の業務は委託や後回しにすることで、重要業務に集中できる環境を作ります。
これにより、スタッフが業務の取捨選択をしやすくなり、効率的な対応が可能になります。
さらなる効果として、次のようなものが期待されます。
・業務の中で優先すべきものと後回しにできるものが明確になります。
・不要な業務を削減するきっかけを作り、事務スタッフの負担を軽減できます。
また、優先順位の決定には、経営者が直接関与し、経営目標に沿った判断を行うことも重要です。
例えば、繁忙期には給与計算や労務手続きの優先度を高める一方で、データ集計や報告業務は後回しにするなどの調整が求められます。
2.業務をシステム化・自動化する
(1) 効率化ツールを導入する
テクノロジーの活用は、業務効率化の大きな鍵です。特に、以下のようなシステムを導入することで、事務スタッフの業務負担を大幅に軽減できます。
推奨システム
・勤怠管理システム
勤怠データの自動収集や残業時間の計算を効率化します。
クラウド型のツール(例:freee、ジョブカンなど)を活用することで、リアルタイムでの管理が可能です。
・給与計算ソフト
複雑な税金や社会保険料の計算を自動化します。
法改正にも対応したソフトを選ぶことで、手作業によるミスを防ぎます。
・労務手続きの電子化
社会保険や雇用保険の手続きを電子申請化することで、時間と労力を削減。
e-Govやクラウド型労務管理システムを活用する。
(2) システム導入の手順
・現状の課題を洗い出す
どの業務が手間や時間を要しているかを明確にします。
・適切なツールを選定する
事務スタッフの業務に合ったシステムを選びます。
・スタッフへの研修を実施
導入後、事務スタッフがスムーズに活用できるように研修を行います。
・効果
業務の属人化を防ぎ、効率化が進む。
データ管理が簡単になり、ミスが減少。
3.業務を分担・アウトソーシングする
(1) 社内での業務分担を見直す
事務スタッフが1人ですべてを抱え込むのではなく、他の社員や経営者自身も業務を分担する仕組みを検討します。
実践方法
・簡易業務を他スタッフに割り振る
郵送業務やファイリングなど、専門知識が不要な作業を他の社員に分担。
・業務負担のバランスを再調整
業務の一部をチームで共有し、負担を分散。
(2) 専門家へのアウトソーシング
給与計算や労務手続きなど、専門的な知識を要する業務は、社会保険労務士や外部の専門機関に依頼することも有効です。
・アウトソーシングのメリット
専門家による正確な対応が期待できる。
法改正や複雑な手続きにも柔軟に対応。
事務スタッフが本来の業務に集中できる。
・おすすめのアウトソーシング業務
給与計算代行
労務管理や手続き代行
年度更新や算定基礎届の手続き
4.社会保険労務士ができる支援
事務スタッフの業務効率化を進めるために、社会保険労務士は多方面からサポートを提供します。
(1) 労務管理体制の整備
就業規則や労働契約書を見直し、業務内容やルールを明確化。
労働時間管理や残業代計算に関する適切な制度設計を支援。
(2) システム導入のアドバイス
勤怠管理や給与計算に適したシステムの選定をサポート。
初期導入や運用に関するフォローアップを実施。
(3) アウトソーシング支援
社会保険や給与計算の代行サービスを提供。
年度更新や社会保険手続きなどの煩雑な業務を専門家が代行。
(4) 教育・研修の提供
経営者や事務スタッフ向けに、最新の法改正や実務に即した研修を実施。
実務に役立つテンプレートやマニュアルを提供し、業務効率化をサポート。
(5) トラブル対応の支援
労務トラブルが発生した場合の迅速な対応と予防策の提案。
管理職や従業員への適切な説明や指導を支援。
まとめ
事務スタッフの業務効率化は、経営者の積極的な関与と環境整備が鍵となります。本コラムで提案した以下の3つの取り組みを実践することで、事務スタッフの負担を軽減し、業務の精度や生産性を向上させることが可能です。
・業務の優先順位を明確化する
業務の「見える化」を行い、重要業務に集中できる環境を整備。・業務をシステム化・自動化する
最新のシステムを導入し、作業効率を大幅に向上。・業務を分担・アウトソーシングする
社内での業務分担を見直し、専門家への依頼で正確性を確保。
さらに、社会保険労務士の支援を活用することで、事務スタッフが安心して業務に集中できる環境を構築し、企業全体の成長を促進できます。ぜひ、これらの取り組みを実践し、効率的で働きやすい職場づくりを進めてください。
福岡県・佐賀県で人事労務の課題解決のことなら、社会保険労務士法人メイカーズにお任せください!
新しい制度導入についてのご相談や具体的なアドバイスが必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。中小企業の労務管理と人事制度の専門家として、貴社の課題解決をサポートいたします!