【ハラスメントの発生を未然に防ぐために】職場環境改善のための法的知識を社労士が解説
2025.01.13
※この記事は、5分程度で読むことができます。
はじめに
職場におけるハラスメントは、従業員のメンタルヘルスや職場環境に深刻な影響を与えるだけでなく、企業にとっても訴訟リスクや社会的信用の低下につながる重大な課題です。厚生労働省のガイドラインでは、企業に対してハラスメント防止の取り組みが義務化されており、適切な対応が求められます。
本コラムでは、ハラスメントの種類と法的基礎、企業が講じるべき具体的な対策、そして社会保険労務士が提供できる支援内容について詳しく解説します。
1.職場で起こりうるハラスメントの種類
(1) パワーハラスメント(パワハラ)
【定義】
・職務上の地位や権限を背景に行われる、業務の適正な範囲を超えた言動で、従業員の就業環境を害するもの。
【具体例】
・過剰な業務指示や必要以上の叱責
・業務からの排除(無視や孤立)
・個人的な事情への過度な干渉
(2) セクシャルハラスメント(セクハラ)
【定義】
・性別に関連する不適切な言動で、従業員の就業環境を害するもの。
【具体例】
・性的な冗談や身体的接触
・デートや交際の強要
・容姿や性別に関する侮辱的なコメント
(3) 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)
【定義】
妊娠や出産、育児休業などに関連して行われる不利益な取り扱いや嫌がらせ。
【具体例】
・育休取得への圧力
・妊娠を理由とした配置転換や解雇
2.ハラスメントに関する法定基礎
(1) 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
2020年6月から施行され、大企業には義務、中小企業には2022年4月から義務化。
【企業の責務】
・ハラスメント防止措置を講じる。
・相談窓口の設置や従業員への周知。
・加害者や被害者への適切な対応。
(2) 男女雇用機会均等法
セクハラ防止に関する企業の責務が定められています。
【具体的内容】
・職場でのセクシャルハラスメント防止措置。
・被害者が不利益を被らないための対応。
(3) 育児・介護休業法
マタハラ防止に関する規定が設けられています。
【主な内容】
・妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いの禁止。
・育児休業取得者への嫌がらせや不利益な措置の防止。
(4) 民法・労働契約法
ハラスメントによる損害賠償請求の基礎となる場合があります。
【ポイント】
・民法第709条(不法行為による損害賠償請求)
・労働契約法第5条(安全配慮義務)
3.企業が講じるべき具体的な対策
(1) 就業規則の整備
ハラスメント防止の具体的なルールを就業規則に明記します。
【記載内容例】
・ハラスメント行為の定義と禁止事項。
・相談窓口や報告方法。
・加害者への懲戒処分規定。
【具体的な整備ポイント】
・従業員がルールを理解しやすいよう、専門用語を避けた記述。
・法改正に伴う定期的な見直しと更新。
・従業員に対する説明会やガイドライン配布。
(2) 相談体制の整備
従業員が安心して相談できる環境を整備します。
【具体的な取り組み】
・内部相談窓口の設置。
・外部の専門機関との連携。
・匿名相談を受け付ける仕組み。
【追加の施策】
・相談内容の記録と分析による傾向把握。
・相談窓口担当者への定期的なトレーニング。
・プライバシー保護を徹底した運用ルールの策定。
(3) 社内教育・啓発活動
全従業員に対してハラスメント防止の教育を定期的に実施します。
【内容】
・ハラスメントの種類と防止方法。
・被害者になった場合の対応策。
・管理職向けの予防と対応研修。
【実践的な活動】
・ケーススタディを取り入れたワークショップ。
・Eラーニングシステムを活用した教育プログラム。
・新入社員研修への組み込み。
(4) モニタリングと改善
・定期的に職場環境を点検し、必要に応じて対策を強化します。
【実施例】
・従業員満足度調査やアンケートの実施。
・トラブル発生時の迅速な原因分析と対応。
【改善計画】
・調査結果に基づく具体的なアクションプランの策定。
・フォローアップ調査を実施し、効果を検証。
・ハラスメント防止委員会の設置による継続的な監視。
4.社会保険労務士ができる支援
(1) 就業規則の見直しと作成支援
・ハラスメント防止に対応した就業規則の改定をサポート。
・最新の法令に基づく規定追加や修正を実施。
(2) 相談窓口設置のサポート
・企業内外における相談窓口の設置方法を提案。
・外部委託サービスの活用を含めた仕組み作りを支援。
(3) 教育研修の実施
・ハラスメント防止に関する従業員研修や管理職向け講習を実施。
・ケーススタディを活用した具体的な予防策の教育。
(4) トラブル発生時の対応支援
・被害者と加害者への適切な対応に関するアドバイス。
・労働基準監督署や弁護士との連携支援。
(5) 職場環境診断
・定期的な職場診断を通じて、潜在的なリスクを特定。
・改善計画の立案と実施サポート。
まとめ
職場でのハラスメントは、従業員だけでなく企業の成長にも大きな悪影響を及ぼします。法令に基づいた適切な防止対策を講じることで、トラブルを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける職場環境を整備することが可能です。
社会保険労務士の支援を活用することで、専門的な視点からのアドバイスや体制構築が可能になります。ぜひ、プロの力を借りながら、ハラスメントのない健全な職場づくりを目指しましょう。
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