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【中小企業でもできる】大手企業の先進事例をヒントにした柔軟な人事制度づくりについて社労士が解説

2024.12.03

※この記事は、労働新聞社によって2024年11月28日に公開された「管理職の報酬開示し挑戦促す 社内スカウトも解禁 日本ガイシ」という記事を受けたコラムとなります。

記事リンク→https://www.rodo.co.jp/news/187390/

はじめに

昨今、労務管理や人事制度の改革は、大企業のみならず中小企業にとっても重要な課題となっています。特に人材不足や業務の多様化が進む中で、従業員一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出し、企業全体としての生産性向上を図ることが求められています。

本稿では、日本ガイシ㈱が導入を予定している新しい管理職制度を参考にしながら、中小企業が取り組むべき労務管理制度の改革のポイントを探ります。中小企業でも実践可能な形に落とし込んでいるため、ぜひ自社の施策に役立ててください。

1.職務記述書の作成で透明性を高める

・日本ガイシの事例
日本ガイシは、管理職の全ポジションに「職務記述書」を設定し、社内で開示する仕組みを導入します。この記述書では、ポジションに必要な役割や報酬レンジが明確化され、従業員が自律的にキャリアを描きやすくなります。

・中小企業への応用
中小企業でも、職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成することで、各職務の範囲や期待される成果を明確にできます。
職務記述書の作成においては、例えば、以下のようなポイントを定義することが重要です。

1.その職務の目的と責任範囲
2.必要なスキルや資格
3.成果の具体的な指標(KPI)

職務記述書を作ることで、従業員が自分の役割を正確に把握でき、モチベーションを向上させるきっかけとなります。また、上司や同僚との役割分担が明確になり、業務効率化が期待できます。

2.等級制度を複線化してキャリアの多様性を提供する


・日本ガイシの事例
同社は、「ライン長」「チームリーダー・専門職」「高度専門職」の3つのコースを設け、役割に応じた等級と報酬レンジを設定しました。これにより、昇進のみならず、専門性を活かしたキャリアパスも可能にしています。

・中小企業への応用
中小企業では、リソースの限界から多様なキャリアパスを用意するのが難しいケースが見受けられます。しかし、以下のような工夫をすることでその実現可能性が高まります。

1.一般職とリーダー職の2つのラインを設ける
  ・現場業務に特化した「スペシャリスト」
  ・チームを率いる「マネジメント職」
2.柔軟な報酬制度を導入
  ・職能や役割に応じた報酬を明示し、公平性を確保する。
3.スキル開発を支援
  ・必要なスキルを社員に提供し、それぞれのコースに進む支援を行う。

これにより、従業員は昇進以外にも自己成長を通じて会社に貢献できる選択肢を得られます。

3.評価制度を「成果」と「行動」の両面で見直す

・日本ガイシの事例
成果評価と行動評価の2軸で管理職を評価し、等級のレンジ内で報酬を調整する仕組みを採用します。この仕組みは、公平かつ透明性のある評価を促進します。

・中小企業への応用
中小企業においても、評価軸を複数設けることで、単なる売上成果だけでなく、従業員の努力や行動を正当に評価できます。

1.成果評価:定量的な目標(例:売上、コスト削減、プロジェクト完了率)
2.行動評価:会社の価値観に基づいた行動(例:チームワーク、問題解決能力)


従業員が具体的な評価基準を理解しやすくするため、事前に基準を共有し、評価プロセスを透明化することが大切です。

4.社内公募とスカウト制度で人材を活性化する

日本ガイシの事例
同社は、社内公募を拡充し、新たにスカウト制度を導入します。これにより、事業部が必要な人材を直接選び出せる環境を整えています。

中小企業への応用
中小企業では、以下のような形で内製化されたスカウトや公募制度を取り入れることが可能です

・社内異動の希望調査:年に1~2回、従業員がキャリア希望を記入できるアンケートを実施する。
・スキルデータベースの作成:各従業員のスキルや経験をデータベース化し、適材適所を実現する。
・プロジェクトベースの異動:特定のプロジェクトで必要な人材を社内から募る。

これにより、社員自身が主体的にキャリアを形成できるだけでなく、企業全体で多様なスキルを活かせる環境が整います。

5.年齢や役所に縛られない柔軟な人事制度

日本ガイシの事例
ライン長の任期制や役職定年の廃止、年齢による一律の収入抑制の撤廃を導入し、柔軟な労務管理を実現しました。

中小企業への応用
中小企業においても、年齢や役職に固定観念を持たない下記のような仕組みを取り入れることは可能です。

・プロジェクト任期制:一部のリーダーポジションをプロジェクトごとの任期制にする。
・役職の定期見直し:定期的に役職や報酬の妥当性を見直す仕組みを作る。
・シニア層の活用:定年後もスキルや経験を活かせるポジションを柔軟に設計する。

まとめ

今回紹介した日本ガイシの事例は、大手企業ならではの規模感を感じさせるものの、多くの要素は中小企業でも取り入れられる可能性があります。特に重要なポイントは、次の3つです。

1.透明性のある仕組みを導入
  ・職務記述書や等級制度を活用。
2.従業員の主体性を尊重
  ・公募やスカウト、柔軟なキャリア設計。
3.成果と行動の両面で評価
  ・公平な評価基準を設定。

これらの施策を中小企業に適した形で導入することで、社員のモチベーション向上と組織の活性化を目指せます。
労務管理制度は、短期的な変化だけでなく、企業文化全体に影響を及ぼす重要な要素です。自社の現状や課題を見つめ直しながら、少しずつでも改善を進めていきましょう。

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