【従業員の健康と企業の持続可能性を守るために】カスタマーハラスメントの実態と対策を社労士が解説
2024.12.13
※このコラムは、5分程度で読むことができます。
※このコラムは、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参照して作成しています。
はじめに
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は、近年、企業や従業員にとって深刻な問題となっています。
サービス向上を目指す企業文化の中で「お客様は神様」という考えが存在している一方で、一部の顧客による過剰な要求や暴言が従業員を傷つける事態が増加しています。
こうした問題は、単に職場でのトラブルにとどまらず、企業の信頼や従業員の健康に重大な影響を及ぼします。本コラムでは、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参照し、カスハラ対策のポイントを解説します。
1.カスハラの現状と背景
カスハラとは、顧客や取引先が業務上の適切な範囲を超えたクレームや要求をし、それが従業員の心身にストレスや負担を与える行為を指します。この問題が拡大している背景には以下の要因が考えられます。
・消費者意識の変化:サービスの質に対する要求が高まる一方で、消費者の期待も増大し、不満があれば即座に表明する傾向が強まっています。
・SNSの影響:顧客が苦情をSNSで拡散し、それが企業の評判に直結するリスクが増えています。
・人手不足:従業員数が限られる中で、顧客対応が少数のスタッフに集中し、負担が過剰になるケースが多発しています。
2.カスハラがもたらす影響
カスハラによる影響は多岐にわたります。代表的なものを以下に挙げます。
・従業員のメンタルヘルス悪化:ストレスや不安によるモチベーション低下、退職増加。
・企業のブランドイメージ損失:クレーム対応が適切に行われない場合、逆に企業が非難される可能性。
・法的リスクの増加:カスハラ対応の失敗が労働災害として認定されるケース。
3.カスハラ防止のための基本方針
厚生労働省のマニュアルでは、企業がカスハラ問題に取り組むために次の3つの基本方針が推奨されています。
・カスハラを許さない職場文化の醸成
組織としてカスハラを認識し、許容しないという方針を明確にします。トップがその姿勢を示すことが重要です。・従業員の安全と健康の確保
カスハラから従業員を守るための具体的な施策を講じ、被害を防ぐ仕組みを整えます。・問題発生時の適切な対応体制
被害が発生した際の迅速な対応を可能にするマニュアルや相談窓口の設置。
4.カスハラに対する具体的な施策
カスハラ対策は、予防策と事後対応策の両輪で進める必要があります。
(1)予防策
・研修の実施
従業員や管理職を対象に、カスハラの定義や対応方法について教育しましょう。
・社内ルールの策定
カスハラ対応マニュアルを作成し、全従業員に周知徹底しましょう。
・顧客への周知
店舗やウェブサイトに「不当な要求や暴言には応じません」と明記しましょう。
(2)事後対応策
・相談窓口の設置
カスハラを受けた従業員が気軽に相談できる窓口を設置し、必要に応じて専門家や弁護士と連携しましょう。
・心理的サポートの提供
メンタルヘルスの専門家によるカウンセリング体制を整えましょう。
・法的措置の検討
明らかに違法な行為があった場合は警察や弁護士に相談し、必要に応じて法的措置を取りましょう。
5.組織全体で取り組むべき課題
カスハラ対策を成功させるためには、従業員、管理職、経営層が一丸となることが不可欠です。特に以下の視点が重要です。
・リーダーシップの発揮
経営者や管理職が率先してカスハラ問題に取り組む姿勢を示します。
・風通しの良い職場環境の構築
問題が発生した際に迅速に報告・相談できる環境を整備します。
・継続的な改善
対策の有効性を定期的に評価し、改善を図ります。
6.社会保険労務士ができる支援
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を進めるにあたり、社会保険労務士は労働環境の改善や従業員のメンタルヘルス対策を中心に、企業の支援が可能です。具体的には以下のような支援を行います。
(1) 社内ルール・就業規則の整備
カスハラ対策を明文化し、社内ルールや就業規則に盛り込むことで、従業員が安心して業務に従事できる環境を整備します。社労士は法令に基づき、適切な規定やルール策定の支援を行います。
(2) 相談窓口の運用サポート
従業員がカスハラを受けた場合に迅速に対応できる相談窓口の設置や運用方法についてアドバイスを提供します。外部相談窓口の設置や運用改善の提案も可能です。
(3) 研修の実施
カスハラの理解促進や適切な対応方法について、管理職や従業員向けの研修を行います。特に、労働法に基づく安全配慮義務や、メンタルヘルス対策の重要性を解説し、組織全体の意識向上を図ります。
(4) 労災認定や法的手続きのアドバイス
カスハラが原因で従業員の健康に被害が生じた場合、労災認定申請の支援や労働基準監督署への相談のサポートを行います。また、企業が適切な法的措置を講じる際のアドバイスも提供します。
まとめ
カスハラ問題は、企業文化や顧客との関係性を見直す良い機会でもあります。単なる防御的な対応にとどまらず、「従業員を守ることが顧客満足度向上にもつながる」という視点を持つことが重要です。健全な職場環境を維持しながら顧客対応を強化する取り組みを進め、カスハラに負けない強い組織を築きましょう。
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