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【未払い残業代請求で訴えられないために】労務管理の基本チェックリストについて社労士が解説

2024.12.19

※この記事は、5分程度で読むことができます

はじめに

近年、未払い残業代を巡る労使間のトラブルが増加しています。これらの問題は、経営者にとって大きなリスクであり、時には多額の支払い義務が生じることもあります。未払い残業代を防ぐためには、適切な労務管理が不可欠です。

このコラムでは、基本的なチェックポイントをまとめたチェックリストと、社会保険労務士が提供できる支援内容について詳しく解説します。

1.未払い残業代のリスクとその影響

1.未払い残業代の存在が企業に与える影響

(1)経済的リスク
未払い残業代は、過去2年(悪質な場合は3年)分に遡って支払う必要があり、膨大な金額になる可能性があります。この遡及期限は、労働基準法第115条に基づき、賃金請求権の消滅時効として定められています。

(2)企業イメージの低下
訴訟や報道により、企業の信用が失われるリスクがあります。

(3)人材流出
労働環境への不満が原因で優秀な人材が離職する可能性。


2.未払い残業代が発生する主な原因

・労働時間の適切な管理ができていない。
・残業代の計算方法に誤りがある。
・みなし残業や固定残業代制度が不適切に運用されている。

2.労務管理の基本チェックリスト

以下のチェックリストを活用して、未払い残業代が発生するリスクを軽減しましょう。

1.労働時間管理
(1)タイムカードや勤怠管理システムを導入していますか?
・タイムカードや勤怠管理システムを利用して、全社員の出退勤時間を正確に記録しましょう。
・記録は、労働基準法第109条に基づき、3年間の保存義務があります。これには労働時間や休憩時間の記録も含まれます。

(2)変形労働時間制やフレックスタイム制を適正に運用していますか?
・制度を導入する場合は、労使協定を締結し、行政への届出を忘れずに行います。
・労働時間が法定内に収まるよう、適切な計画を立てましょう。

(3)休憩時間の取得状況を確認していますか?
・休憩時間が適切に取れていない場合、労働時間としてカウントされることがあります。
・労働時間の中間に休憩を取るよう、運用ルールを明確化します。

(4)管理職の労働時間を把握していますか?
・管理監督者とされる社員でも、条件を満たさない場合には残業代が発生します。
・管理職でも実際の労働時間を把握することが重要です。


2.残業代の計算
(1)法定労働時間を超える労働に対して適切に割増賃金を支払っていますか?
・割増率は、法定外残業が25%以上、深夜労働が25%以上、休日労働が35%以上です。
・割増計算の基礎となる賃金から除外できる項目を確認し、計算を適切に行います

(2)固定残業代を導入している場合、その運用が適切ですか?
・固定残業代は、対象となる時間数や金額を明確にし、就業規則や労働契約書に明記します。
・超過分の労働時間については、別途支払う必要があります。

(3)時給制や日給制社員の割増賃金を正確に計算していますか?
・賃金形態にかかわらず、割増賃金の計算方法を統一し、全社員に適用します。


3.就業規則と労働契約書

(1)就業規則における労働時間や残業代の計算方法が法令に準拠していますか?
・就業規則を定期的に見直し、最新の法令改正に対応しましょう。

(2)労働契約書に具体的な条件を明記していますか?
・賃金の内訳や労働時間、割増賃金の条件を明確にし、不明確な記載を避けます。

(3)管理職の残業代や勤務条件に関する規定が適正ですか?
管理監督者としての適用条件を満たしていない場合、残業代が発生します。


4.管理職の教育
(1)管理職に労働時間管理の重要性を理解させていますか?
・労働時間管理に関する研修を実施し、法律や制度についての理解を深めましょう。

(2)部下の残業状況を監視する仕組みがありますか?
・部下が過剰に残業をしていないか、定期的に確認し、適切に指導します


5.コミュニケーション
(1)社員からの残業代に関する問い合わせや不満に迅速に対応していますか?

・問い合わせがあれば速やかに確認し、適切な対応を行います。

(2)社員への労働条件や残業代計算の説明を定期的に行っていますか?
・説明会や個別面談を通じて、社員が納得する形で説明を行います。

(3)労働条件に関するアンケートを実施していますか?
・アンケートを通じて、社員の不満や改善要望を把握し、職場環境の向上に活用します。

3.社会保険労務士が提供できる支援

社会保険労務士は、労務管理の専門家として、未払い残業代に関するリスクを軽減するための支援を提供します。

1.就業規則と労働契約書の見直し
・労働時間や残業代に関する規定を法令に基づき整備します。
・法改正や会社の実態に応じて適宜アップデートします。

2.勤怠管理システムの導入サポート
・適切な勤怠管理システムの選定や導入を支援します。
・労働時間の記録方法を社員に周知徹底します。

3.固定残業代制度の適正化
・固定残業代が法令に適合しているかを確認します。
・制度運用に関するアドバイスを提供します。

4.労務トラブルの未然防止
・残業代に関する社員からの苦情や問い合わせに対応する体制の構築を支援します。
・トラブルを予防するための教育や研修を実施します。

5.助成金活用のサポート
・勤怠管理や労務改善に利用できる助成金の情報提供と申請支援を行います。
・働き方改革関連の助成金を活用し、負担を軽減します。

4.まとめ

未払い残業代を防ぐためには、労働時間の正確な管理と残業代の適切な支払いが基本です。本コラムで紹介したチェックリストを活用し、社内の労務管理体制を見直してください。また、社会保険労務士の支援を受けることで、法令遵守の徹底やトラブルの未然防止が可能になります。

労働環境の改善は、社員の満足度向上や企業の成長にもつながります。今一度、労務管理の基本を見直し、健全な職場づくりを進めていきましょう。

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