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【残業代の仕組みが難しい!】残業代の詳細な計算方法について社労士が解説

2025.01.08

※この記事は、5分ほどで読むことができます。

はじめに

中小企業の経営者にとって、残業代の適切な支払いは避けて通れない重要なテーマです。特に労働基準法に基づく残業代の計算方法やルールは複雑で、知らないうちに法令違反となるケースも少なくありません。未払い残業代が発生すると、従業員とのトラブルや行政指導、最悪の場合訴訟リスクに直結します。

本コラムでは、労働基準法における残業代の基本ルールを解説するとともに、具体的な計算方法や社会保険労務士が提供できる支援内容を詳しく紹介します。

1.残業代の基本ルール

(1) 残業代とは
労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間を超える場合に割増賃金を支払うことが義務付けられています。この超過分が「残業代」となります。

    (2) 割増賃金率
    残業代の計算に必要な割増賃金率は以下の通りです。

    ・時間外労働:25%以上
    ・深夜労働(22時から翌5時): 25%以上
    ・休日労働: 35%以上
    ・時間外かつ深夜労働: 50%以上

    (3) 計算方法の基本
    基礎賃金の確認
    割増賃金の基礎となる賃金を算出します。
    交通費や家族手当など、基礎賃金に含まれない項目があるため注意が必要です。

    ・割増賃金の計算
    基礎賃金を1時間あたりに換算し、割増賃金率を乗じて算出します。

    計算例
    【月給30万円、1か月の所定労働時間が160時間の場合】
    ・基礎賃金の1時間あたり単価 = 300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円
    ・時間外労働1時間あたりの割増賃金 = 1,875円 × 1.25 = 2,343.75円

    2.未払残業代のリスク

    (1) 法令違反によるペナルティ
    労働基準法違反により、以下のようなリスクがあります

    ・行政指導
    労働基準監督署からの是正勧告。
    ・罰則
    最大で6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。
    ・未払い残業代の遡及請求
    最長で3年分(2020年の法改正以前は2年分)の未払い残業代が請求される可能性。

      (2) 従業員との信頼関係の崩壊
      未払い残業代は、従業員の不満を招き、モチベーション低下や離職につながります。長期的には企業イメージの悪化にもつながります。

      3.よくある誤解とその対処法

      (1) 管理職には残業代が不要?

        管理職だからといって無条件に残業代が不要になるわけではありません。「管理監督者」と認められるには以下の条件を満たす必要があります。

        ・労働時間の裁量がある
        勤怠に縛られず、自由に働き方を選べることが条件です。

        ・給与や待遇で優遇されている
        一般社員に比べて役職手当などが十分に支給されている必要があります。

        ・経営方針の決定に関与している
        部署運営や方針決定に関与する役割を持つことが重要です。

        ・誤解の対処法
        役職手当があるだけでは不十分: 実態が管理監督者として認められる必要があり、曖昧な取り扱いはトラブルの原因になります。

        ・管理職の定義を明確にする
        就業規則に具体的な基準を明記します。




        (2) みなし残業代は万能ではない

        みなし残業代制度を導入すれば、残業代の管理が簡単になると思われがちですが、実際には慎重な運用が求められます。

        よくある誤解

        ・固定額で問題ないと思っている
        実際の残業時間がみなし時間を超えた場合は、追加支払いが必要です。

        ・みなし残業代を明確に説明していない
        労働契約書や就業規則で、みなし残業時間と金額を明確にする必要があります。


        誤解の対処法

        ・透明性の確保
        就業規則や労働契約書にみなし残業代の内容を具体的に記載します。

        実績管理
        実際の残業時間を記録し、みなし時間を超えた分を適切に支払います。




        (3) タイムカードがないと記録が残らない?
        勤怠管理にタイムカードが必須だと思われがちですが、他の方法でも労働時間を記録できます。

        記録方法の選択肢

        デジタルツールの活用
        勤怠管理アプリやクラウドシステムで記録を管理します。

        ・手書きの出勤簿
        手書きでも正確な記録があれば、証拠として有効です。

        ・自己申告制
        自己申告でも、実態を反映していれば認められる場合があります。


        誤解の対処法

        ・適切な記録方法を導入する
        デジタルツールを活用して記録を正確に管理。

        ・定期的な確認
        労働時間が正確に記録されているか、上司がチェックします。

        4.社会保険労務士ができる支援

        (1) 労働時間管理の適正化
        労働時間の記録方法を見直し、正確な勤怠管理を支援します。
        勤怠管理システムの導入をサポートし、労働時間を可視化します。

        (2) 就業規則の整備
        労働基準法に準拠した就業規則を作成・改定します。
        みなし残業代制度や管理職の取り扱いを明確化します。

        (3) 残業代計算のサポート
        割増賃金の計算方法について具体的にアドバイス。
        過去の支払い状況を確認し、未払いの有無をチェックします。

        (4) 助成金活用のアドバイス
        働き方改革に関連した助成金の申請を支援。
        勤怠管理の改善に活用できる助成金の情報を提供します。

        (5) トラブル対応
        未払い残業代を巡るトラブルが発生した場合の迅速な対応をサポート。
        労働基準監督署への対応や従業員との話し合いに同席します。

        まとめ

        残業代の適切な支払いは、労働基準法を守るだけでなく、従業員との信頼関係を築き、企業の成長に直結する重要な取り組みです。経営者自身が基本ルールを理解することは大切ですが、専門的な対応が必要な場面では社会保険労務士の支援を活用することで、リスクを最小限に抑えることができます。

          ぜひ、社会保険労務士の力を借りながら、安心して労務管理に取り組んでください。

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