【あなたの会社は大丈夫?】三六(サブロク)協定届の作成と届出方法について社労士が解説
2025.01.21

※この記事は、5分程度で読むことができます。
はじめに
労働時間管理は企業の基本的な責任のひとつです。その中でも、時間外労働や休日労働を適切に運用するためには、「三六協定(労働基準法第36条に基づく協定)」の締結と届出が欠かせません。しかし、正しく理解されていなかったり、届出の手続きが不十分であると、法令違反として企業に罰則が科されるリスクがあります。
本コラムでは、三六協定の基本的なルールや具体的な届出方法、そして社会保険労務士が提供できる支援について詳しく解説します。
1.三六協定とは?
三六協定とは、労働基準法第36条に基づき、労使間で締結する協定のことです。この協定を締結し、労働基準監督署に届出をすることで、時間外労働や休日労働が法的に認められるようになります。
(1) なぜ三六協定が必要なのか?
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を超える労働を禁止しています。しかし、業務の都合でこれを超える労働が必要な場合、三六協定を締結し届出を行わなければなりません。
(2) 三六協定の対象となる労働
・時間外労働: 1日8時間、1週40時間を超える労働。
・休日労働: 法定休日(週1回または4週4日以上)に行う労働。
(3) 三六協定の法的効果
三六協定を適切に締結し届出を行うことで、法定労働時間を超える労働が合法的に認められます。これを怠ると、労働基準法違反となり、罰則が科される場合があります。
2.三六協定の作成方法
(1) 協定書の基本事項
三六協定には以下の項目を明記する必要があります。
時間外労働・休日労働の理由
記載例1:”納期が集中する繁忙期に対応するため。”
記載例2:”突発的な業務対応や緊急のトラブル対応が必要なため。”
対象労働者の範囲
記載例1:”製造部門の正社員およびアルバイト。”
記載例2:”全従業員(管理職を除く)。”
時間外労働の限度
記載例1:”1日2時間以内、1か月45時間以内、1年360時間以内。”
記載例2:”1日3時間以内、特別条項適用時は月100時間未満。”
休日労働の範囲
記載例1:”月1回の法定休日において、業務の都合に応じて実施。”
記載例2:”繁忙期(3月および9月)に限り、月2日まで実施可能。”
適用期間
記載例1:”2024年4月1日から2025年3月31日までの1年間。”
記載例2:”2024年4月1日から2024年9月30日までの6か月間。”
(2) 時間外労働の上限規制
働き方改革関連法の施行により、以下のような上限規制が設けられています。
原則:月45時間、年360時間を超えないこと。
特別条項付き三六協定の場合:年720時間を超えないこと(繁忙期などの例外)。
(3) 労働者代表の選出
協定を締結する際には、労働者の過半数代表者を選出する必要があります。この代表者は、経営者の指名ではなく、全従業員の信任を得た上で選任される必要があります。
選出方法
・立候補制:従業員の中から立候補者を募ります。
立候補者が複数いる場合は投票によって決定します。
・推薦制:従業員から信頼される候補者を推薦します。
推薦者が過半数の信任を得た場合、代表者として選任されます。
注意点
労働者代表は、管理監督者ではない従業員である必要があります(管理職や経営者が代表者になることは不可)。
代表者の選出にあたって、全従業員が公平に参加できる仕組みを確保します。
選出の記録(立候補や投票結果、推薦手続きなど)を適切に保存し、労働基準監督署の調査時に提示できるようにします。
形式的な選出ではなく、従業員の信任を得た実質的な選出を行うことが重要です。
3.三六協定の届出方法
(1) 届出先
管轄の労働基準監督署に協定書を届出します。インターネットを利用した電子申請も可能です。
(2) 必要な書類
・三六協定書(2部)
・労働者代表選出の記録(必要に応じて)
(3) 提出のタイミング
協定の適用開始前に届出を完了させる必要があります。また、適用期間が終了する前に更新手続きを行うことも重要です。
(4) 注意点
提出後に承認や認可が必要なわけではありませんが、届出がない場合は法令違反となります。
記載内容に不備がある場合、労働基準監督署から修正を求められることがあります。
4.三六協定が不適切な場合のリスク
(1) 法令違反による罰則
三六協定がないまま時間外労働や休日労働を行うと、労働基準法違反として以下の罰則が科される可能性があります。
・6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
(2) 労働トラブルの発生
労働者とのトラブルに発展し、未払い賃金や労災請求が発生する場合があります。
労働基準監督署による調査が入るリスクが高まります。
(3) 企業イメージの低下
法令違反が公表されると、取引先や従業員からの信頼を失い、採用活動にも悪影響を及ぼします。
5.社会保険労務士ができる支援
三六協定の作成や届出は、法令知識が求められる複雑な業務です。社会保険労務士は以下のような支援を提供できます。
(1) 協定書の作成支援
企業の実態に合わせた協定内容を提案。
法令を遵守した正確な記載内容の作成。
(2) 労働者代表の選出支援
労働者代表選出の手順や記録の作成をアドバイス。
トラブル防止のための手続きサポート。
(3) 届出手続きの代行
労働基準監督署への届出を代行。
不備があった場合の修正対応。
(4) 時間外労働管理の改善提案
労働時間管理の現状分析。
時間外労働を削減するための改善策の提案。
(5) 教育・研修の実施
管理職や従業員向けに、三六協定の意義や労働時間管理の研修を実施。
まとめ
三六協定の適切な締結と届出は、企業が法令を遵守し、健全な労働環境を維持するために欠かせないステップです。しかし、手続きが煩雑であるため、専門家の支援を活用することをお勧めします。
社会保険労務士の支援を受けることで、法令遵守を徹底しつつ、労働時間管理の効率化を図ることが可能です。ぜひプロの力を借りて、安全で健全な職場づくりを進めてください。

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