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【選ばれる企業になるために】勤務間インターバル導入の注意点やポイントについて社労士が解説

2025.01.20

※この記事は、5分程度で読むことができます。

はじめに

少子化や人口減少により、若年労働者の確保が困難になる中、働き方改革関連法の一環である「勤務間インターバル制度」が注目を集めています。

勤務間インターバル制度は、労働者が勤務終了後から次の勤務開始まで一定の休息時間を確保する制度で、過重労働の防止やワークライフバランスの実現を目指しています。

本制度は法的義務ではなく努力義務にとどまっていますが、導入することで健康経営の実現や優秀な人材確保に有利になります。本稿では、勤務間インターバル制度の基本、導入時の注意点、導入事例、そして社会保険労務士が提供できる支援について解説します。

1.勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度とは、勤務終了から次の勤務開始までの間に一定時間の休息を確保する制度です。これはEUの労働時間指令に由来し、原則として11時間以上の休息を設けることが推奨されています。

1. 制度導入の背景
過労死や精神疾患による休職者が増加する中、過重労働の是正が求められています。勤務間インターバル制度は、これらの問題を防止する有効な手段とされており、働き方改革関連法において2019年4月から企業への努力義務として導入されました。

2. 制度の効果
・従業員の健康維持:
十分な休息が取れることで、心身の疲労回復が期待されます。
・労働生産性の向上:健康な状態で業務に臨むことで、パフォーマンスが向上します。
・魅力的な職場環境の構築:働きやすさが向上し、優秀な人材確保に寄与します。

2.勤務間インターバル制度の導入事例

1. 株式会社スリーハイ
工業用・産業用のヒーターを製造する株式会社スリーハイは、2018年3月にインターバル時間9時間の勤務間インターバル制度を導入しました。

従業員の満足度とモチベーションの向上が製品の質向上につながるとの考えから、制度の検討・導入を実施。導入後は従業員の意識変革もあり、残業が減少しました。また、各従業員の業務量を可視化する取り組みも進められ、業務の「見える化」が進展しました。


2. 株式会社山陽新聞社
山陽新聞社では、2017年4月に試験的に勤務間インターバル制度を導入しました。全組合員を対象に、原則11時間を目安とするインターバル時間を設定。

制度導入後、企業全体の時間外労働時間が減少し、特に就職活動中の女子学生から「魅力的な取り組みですね」との声が多く寄せられるなど、企業イメージの向上にも寄与しています。


3. 株式会社三井金属ユアソフト
システム開発・ITサービスを手掛ける株式会社三井金属ユアソフトは、従業員全員を対象にインターバル時間11時間の勤務間インターバル制度を導入しました。

2013年11月に「はつらつ職場づくり宣言」を策定し、2014年9月からフレックスタイム制度を導入するなど、働き方改革を推進。勤務間インターバル制度の導入により、従業員の健康管理・安全衛生面での効果を実感しています。


これらの事例は、勤務間インターバル制度の導入が従業員の健康維持や労働時間の適正化、企業イメージの向上に寄与することを示しています。

    3.勤務間インターバル制度導入のポイント

    勤務間インターバルを導入する際には、以下のポイントを押さえる必要があります。

    1. 就業規則の見直し
    勤務間インターバルに関する規定を就業規則に明記します。
    具体的な記載例は、下記の通りです。

    ・勤務終了から次の勤務開始までの最低休息時間を設定する。
    ・例外措置を設ける場合、その条件を明確にする。


    2. 労働時間管理の徹底
    勤務間インターバルの運用には、正確な労働時間の管理が不可欠です。勤怠管理システムを活用し、休息時間が確保されているかを適切に記録・管理することが重要です。


    3. 従業員とのコミュニケーション
    従業員に制度の目的や内容を正しく理解してもらうため、説明会や研修を実施します。特に、長時間労働が常態化している職場では、意識改革が必要です。


    4. 業務プロセスの見直し
    勤務間インターバルを確保するためには、業務の効率化が求められます。業務量の調整やチーム内でのタスク分担の見直しを行い、制度運用に適した環境を整備します。


    5. 助成金の活用
    勤務間インターバル制度の導入には、「働き方改革推進支援助成金」を活用できます。この助成金は、制度導入のためのコストを一部補助するもので、具体的にはシステム導入費用や研修費用が対象となります。

    4.社会保険労務士ができる支援

    勤務間インターバル制度を導入・運用する際、社会保険労務士は以下のような支援を提供します。

    1. 就業規則の作成・改定
    勤務間インターバルに対応した就業規則の作成や改定をサポートします。また、労働基準法や関連法令との整合性を確保し、リスクを最小限に抑えます。


    2. 制度導入のコンサルティング
    企業の現状を分析し、勤務間インターバル導入の具体的なプランを提案します。業務プロセスやシフト管理の見直しなど、実務的な支援を行います。


    3. 労働時間管理の仕組みづくり
    労働時間を正確に管理するためのシステム選定や導入支援を行います。勤怠管理システムの活用方法についてもアドバイスを提供します。


    4. 従業員向け研修の実施
    勤務間インターバルの意義や運用方法について、従業員向けの説明会や研修を実施します。また、管理職向けには、労働時間管理の重要性について特化した教育を行います。


    5. 助成金申請の支援
    「働き方改革推進支援助成金」をはじめとする助成金の情報提供や申請手続きの代行を行います。助成金を活用することで、企業の負担を軽減します。

    まとめ

    勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康を守るだけでなく、企業の魅力を高め、採用競争力を向上させる重要な施策です。若年労働者を含む多様な人材に選ばれる企業になるためには、制度の有効活用が求められます。


    社会保険労務士は、法令遵守や制度設計の専門家として、企業の勤務間インターバル導入を強力にサポートします。これを機に、企業と労働者がともに健全な職場環境を築く一歩を踏み出しましょう。

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